公開日:2023/05/15 最終更新日:2025/06/16
最近、自宅の空き部屋や空きスペースを活用するビジネスが注目を集めています。間取りが多い一戸建てや子供が独立して部屋が空いてしまった家などで塾や習い事の教室を開きたいと考える人もいるでしょう。今回は自宅を活用した学習塾の開業方法や開業に必要なものや開業にかかる資金などについてまとめます。
自宅の一部を使って学習塾を開くにはどのようにすればよいのでしょうか。開くために必要なことが2つあります。
1つ目は開業届の提出です。開業届とは、個人事業を開業したことを税務署に申告するための書類です。開業届を出すために必要なものは本人確認書類とマイナンバーがわかる書類、印鑑です。
2つ目は個人事業開始申告書の提出で、都道府県税事務所に提出します。塾を開く際に教員免許状は必要ありません。従って、開業届や個人事業開始申告書を提出すれば、誰でも自宅で塾を開けます。
■ 事業開始申請書のダウンロード方法
事業開始申請書は、各都道府県の税務署またはその公式Webサイトから無料でダウンロードできます。「事業開始等申告書」または「個人事業開始申告書」などと表記されている場合もありますので、ご自身の地域の正式名称をご確認ください。
取得方法は次のとおりです。
・お住まいの都道府県税事務所の公式サイトにアクセス
・「様式ダウンロード」「届出書類一覧」などのページを探す
・「事業開始申請書」またはそれに該当する書類をダウンロード
■ 事業開始申請書に記入する内容
申請書には、以下の情報を正確に記入する必要があります。
事業の種類:学習塾を開業する場合は「個人塾」や「学習支援業」などと記載します。
事業の開始日:実際に事業を開始した日を記入します。開業届と同様に、事業開始後1か月以内に提出するのが一般的です。
屋号(塾の名称):個人塾の名前を記載します。自由に設定できますが、生徒や保護者に伝わりやすく、覚えやすい名称を選ぶと良いでしょう。
所在地:事業を行う住所、自宅の所在地を記入します。
代表者氏名:本人の氏名を記入。押印が必要な場合もあるため、署名欄に注意してください。
誤記や記入漏れがあると受理されない場合があるため、内容はよく確認してから提出することをおすすめします。
■ 提出方法と提出先
記入が終わったら、提出の段階に進みます。提出先は、事業所所在地を管轄する都道府県税事務所です。
提出方法には2通りあります。
窓口での直接提出:不明点がある場合、職員に質問しながら手続きを進められるため安心です。
郵送による提出:事前に記入・押印を済ませた書類を封筒に入れ、宛先を記載して郵送します。控えの返送を希望する場合は、返信用封筒(切手付き)を同封してください。
自宅で学習塾を開業するにあたり、教員免許や学習塾教室長検定といった資格の取得は義務ではありません。
ただし、こうした資格を持っていることは、開業時に大きな信頼の後押しとなる場合があります。保護者や生徒にとって、塾を選ぶ際の決め手となるのは、指導者の専門性や誠実さです。資格があることで、教育に関する知識や経験があることを客観的に示すことができ、安心感につながります。
また、資格を取得する過程で得られる学びや視点も、今後の塾運営に役立つ場面があるかもしれません。開業を本格的に考える段階で、こうした資格の取得を検討しておくことは、長期的な信頼構築やブランディングにおいて大きな意味を持つ可能性があります。信頼される学習塾として成長していくためのひとつの手段として、前向きに資格取得を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
塾を開くためにどの程度のスペースが必要なのでしょうか。必要スペースは開業する塾のスタイルによって大きく変わります。塾には集団指導と個別指導の2つのスタイルがあります。集団指導であれば、少人数指導であっても5〜10人が勉強できるだけの空間が必要です。個別指導であれば講師1人に対し1〜3人程度ですので、一般的な部屋で十分となります。
事業として成り立ちやすいのは集団指導です。その理由は、講師1人で教えられる生徒数が多いからです。個別指導はスペースが小さくて済む反面、時間当たりで教えられる生徒が多くても3人までですので、集団指導ほどコストパフォーマンスがよくありません。
どちらを選択するかは、学習塾として利用できるスペースの広さ次第となります。事業が軌道に乗るかどうかわからない段階で、集団指導を始めるのはリスクがあります。となれば、自宅で開く塾として適しているのは個別指導となるでしょう。個別指導であれば、一般住宅の書斎に机といすを設置するだけで十分ですので自宅の一室でも十分開業できるでしょう。
自宅で学習塾を開業するには、事前にどれくらいの費用がかかるのかを把握しておくことが大切です。
大きく分けて、開業にかかる費用は「初期投資(イニシャルコスト)」と「運用経費(ランニングコスト)」の2つに分けられます。それぞれの内容を順に確認していきましょう。
学習塾を自宅で始める際には、開業当初に必要となる設備や環境の整備に一定の費用がかかります。とくに、生徒が安心して学べる空間を整えるためには、基本的な授業備品の準備と、快適な学習環境を整えるための工夫が求められます。ここでは、開業時に押さえておきたい「授業備品」と「環境整備」のポイントについて紹介します。
■ 授業備品
具体的に用意しておきたい授業備品には、以下のようなものがあります。
・黒板、またはホワイトボード
・チョークやホワイトボードマーカー
・生徒用の学習机と椅子
・講師用の机と椅子
・個人用のコンピューターまたはタブレット
コンピューターやタブレットは、教材の印刷やオンラインコンテンツの活用、保護者との連絡業務など、多くの場面で活躍します。指導方法としてオンライン授業も視野に入れる場合は、カメラやマイクなどの周辺機器も忘れずに準備しておきたいところです。
また、マンツーマン指導を想定する場合と、同時に複数の生徒を指導する場合とでは、必要な机や椅子の数が変わります。塾の方針や授業の構成に応じて、無理のない範囲で必要な設備を揃えてください。生徒が集中して学習に取り組めるような、整った学習環境の整備が信頼にもつながります。
■ 環境整備
自宅で学習塾を開業する際には、初期費用を抑えやすい反面、生徒が快適に学べる環境を整えるための設備投資が必要となります。とくに、自宅を学習の場とする場合、一般的な生活空間とは異なる「集中できる学習環境」の構築が重要です。そのためには、いくつかの基本設備を整えておくことが求められます。
・冷暖房設備
・空気清浄機
・消毒、除菌用器具
・Wi-Fiやインターネット環境
・適切な照明
・快適な教卓および生徒用机と椅子
・静かで集中しやすい環境
・教室内の清潔さと整頓
自宅で学習塾を始めるには、単にスペースを用意するだけではなく、生徒が安心して集中できる空間づくりが不可欠です。こうした環境整備のための費用は、開業準備において軽視できない要素となるでしょう。
開業後の運営を続けていくためには、継続的な支出である運用経費も考慮する必要があります。自宅で塾を開く場合、家賃が不要になるという点は大きなメリットです。その分、他の経費をどのように管理するかが経営の安定に影響します。運用経費には下記のような費用がかかります。
項目 | 内容 | 金額目安 | |
---|---|---|---|
光熱費 | 電気・ガス・水道などの費用 | 一日あたり約3,000円 | |
教材費 | テキストや問題集など、生徒用の学習教材 | 約200,000円〜300,000円 | |
広告宣伝費 | チラシ、Webサイト、SNSなどでの宣伝活動費用 | 約500,000円 | |
その他経費 | 備品の補充や日用品などの購入にかかる費用 | 必要に応じて変動あり |
開業初期は特に支出が先行しやすいため、必要最小限に絞って費用を管理することが望ましいです。講師を雇わず一人で運営する場合は、人件費を削減できる点もポイントです。運営が安定してきた段階で、広告や設備に再投資する計画を立てるとより効果的です。
まとめると、初期投資として200万円、運用経費として100万円、不意の出費や生徒募集がうまくいかなかったときのための予備費として200万円の合計500万円ほど用意する必要があります。
塾は自宅でも開業できますが、メリットはあるのでしょうか。自宅で塾を開くことで、初期費用が抑えられたり、毎月の家賃が節約できたりします。自宅であれば通勤時間もかからないため、負担も少なく済むでしょう。
ここからは、自宅で塾を開業するメリット・デメリットを紹介します。これから自宅で塾を開業しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
まず、メリットは以下のとおりです。
■ 初期費用が抑えられる
自宅で塾を開業する1番のメリットは、初期費用が抑えられることです。塾を開業するためにテナントを借りると、敷金や礼金、内装費用などで300〜500万円ほどかかります。
しかし、自宅を使って開業すれば、新たに借りるわけではないので、初期費用が抑えられます。自宅で塾を開業する場合の資金は、敷金や礼金などが不要なので、内装費用のみです。
内装費用も工夫をすれば抑えられるでしょう。
■ 毎月の家賃が節約できる
自宅で塾を開業すれば、家賃などの固定費が節約できる点もメリットの1つです。塾を経営していると、収入は生徒からの受講料です。
しかし、生徒数は常に安定しているわけではなく、減る時もあります。テナントを借りて塾を開業した場合、生徒数に関係なく賃料が発生します。
しかし、自宅であれば追加で家賃が発生しないので、リスクが少ないです。家賃の支払いができないなどのプレッシャーがないのは、自宅で開業するメリットになるでしょう。
■ 副業でも始められる
テナントを借りずに、自宅で塾を開業すれば、副業から始められます。自宅であれば初期費用が抑えられるので、気軽に始めやすいです。
また、本業が終わってから塾業務をする際も、自宅なら移動時間もかかりません。開業費用も抑えられるので、副業で始めるなら自宅での開業がおすすめです。
■ 人脈を活かして始めやすい
自宅で塾を開業する場合、周辺地域の知り合いなど、人脈を活かして生徒を集められます。自宅であれば、近所の知り合いが子どもを通わせてくれる可能性があります。
テナントを借りて開く塾より、自宅の方が人脈を活かしやすいです。広告費用の削減にも繋がります。
また、口コミで広がれば、どんどん生徒が集まってくるでしょう。
自宅で塾を開業するメリットを解説しましたが、もちろんデメリットもあります。自宅での塾開業は、デメリットを把握しておくことも大切です。
開業したあとに後悔しないよう、自宅で塾を開業するデメリットを確認しておきましょう。
■ 生徒数を増やすのが難しい
自宅で塾を開業した場合、生徒集めに苦労する可能性があります。近所での人脈があれば、生徒が集まることもあります。
自宅で塾を開業すると、片手間で経営しているというイメージを持たれやすいです。その場合、通わせても成績アップしないのではないかと疑問を持つ保護者も出てきます。
結果、近くの大手塾が選ばれてしまい、生徒の確保に苦労してしまいます。また、他人の家に入りづらいという印象を持っている保護者も多いです。
そのため、テナントを借りて開業するよりも、生徒数を増やすのが難しいです。
■ 受け入れ可能な生徒数が限られる
テナントに比べて、自宅は広さが決まっているので、受け入れられる生徒数に限りがあります。また、自宅で経営する塾は、部屋が狭く、アルバイトを雇えないことが多いです。
そのため、1人で教えられる人数にも限りがあります。受け入れられる生徒の数が限られると、収入の上限も決まってしまいます。
自宅での塾経営で、収入を上げようとすると、受講料を値上げするしかないでしょう。塾の経営でどんどん収入を増やしたい場合は、自宅での開業がおすすめできません。
■ ご近所トラブルにつながりやすい
自宅で塾を開業すると、ご近所トラブルが起きる可能性があります。子どもが塾終わりに自宅前で騒いでいたり、生徒の自転車が停められていて邪魔だと言われたりします。
その場合、今後暮らしていく上で気まずい思いをするかもしれません。ご近所トラブルを防ぐためには、生徒に指導をすることが大切です。
塾が終わったら帰るなど、事前に指導しておくことで、ご近所トラブルが防げます。さらに、プリントなどを配布し、保護者に共有するのも効果的です。
自宅で学習塾を開業する際には、成功に向けて意識しておきたいポイントがいくつかあります。なかでも特に重視したいのが、「大手塾とは異なる独自性の確立」「経費を抑えた安定した経営の実現」「塾の存在を効果的に発信する工夫」の3点です。
まず、個人塾ならではの強みを明確に打ち出すことが大切です。たとえば、生徒一人ひとりの理解度や性格に合わせた柔軟なカリキュラム、家庭的で落ち着いた環境での丁寧な個別指導などは、大手塾では実現しにくい魅力です。そうした特徴や教育方針をしっかりと伝えることが、保護者や生徒の信頼につながります。
また、開業当初は生徒数が限られるケースもあるため、運営費を可能な範囲で抑える姿勢も求められます。教材費や光熱費、広告費などは必要最低限にとどめ、まずは無理のない範囲で運営を軌道に乗せることが安定につながります。利益の追求よりも、まずは信頼関係の構築に力を注ぐことが重要です。
さらに、教育の質が高くても塾の存在が知られていなければ、生徒募集には結びつきません。SNSやホームページなどを活用した情報発信に加え、地域に密着したポスティングや口コミの活用も効果的です。開校記念のキャンペーンや無料体験の導入により、興味を持ってもらえるきっかけづくりが期待されます。
このような工夫とあわせて、教育の質を高める取り組みも並行して行いたいところです。ICT教材を活用したり、オンラインでの指導環境を整えたりすることで、学習効果をさらに高められます。加えて、授業の進行や子どもの様子を保護者に定期的に伝える仕組みを取り入れると、安心感の提供にもつながります。
自宅での塾運営は家庭との距離が近くなる反面、柔軟な対応力も求められます。日々の変化に気づきやすい環境だからこそ、対応方針をあらかじめ考えておくことで、スムーズな対応が可能になります。
こうした取り組みを積み重ねていくことで、自宅塾は地域に根づいた学びの場として、信頼と実績を育んでいけるはずです。
今回は自宅を活用した学習塾の開業についてまとめました。塾は開業届などを提出するだけで誰でもスタートできます。自宅でスタートさせれば、家賃を抑えられるためランニングコストを低減させられます。しかし、内装工事や宣伝広告の一定の費用を見込まなければならず、生徒募集がうまくいかないときのことも考えると、500万円ほどの開業資金を用意するべきです。
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